今読むべき8年前の『日本「半導体」敗戦』

ここのところ半導体復興議連ができ、巨額の国家予算も付きそうと喜んでいた……。もともと半導体技術誌からスタートした自分としては、どうしようもなく小さな蟷螂の斧ではあるが、日々自分にも何かできないかと考えていたりする。取り急ぎ今の状況と問題を整理したくて読んでみた一冊が湯之上隆氏の『日本「半導体」敗戦』だ。

 

今日Kindleで手に入れ一気に読み終え、しばし呆然としている。

 

8年前の本だから歴史を振り返るつもりで読んだ。なのに、今の問題を鋭く突いている。まったく古くない。

 

著者は、元日立の半導体技術者でこの分野の論客。書かれている内容は今この時点でも読む側に本質を突きつける。逆に言えば、日本はこの8年間いったい何をしてきたんだ、どうして何も変わらず改善しないまま、失敗を続けてきたんだろうと歯がみするかもしれない。投資できないから負けたと思っていたが……。

 

要素技術は持っていたし世界トップを行っていた。今もその一部は残されている。でも、何かを間違え、足を取られ、罠のようなものから抜け出せなかった。少し大げさかもしれないが、本書からはかつての日の丸半導体エンジニアたちのうめき声、悲鳴に近いものが伝わってくる。政府と行政、半導体関係者で、日本の半導体復興を強く願うなら、まずは本書を通背するほどに読み解くところから始めなくちゃいけない気がする。