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『マル農のひと』(左右社)

この本、Facebookで元の会社の先輩が推薦していて、読んでみたら大当たりだった。本書の主役、道法正徳さんという方は「流しの農業技術指導員」。「人間どもの声ではなく植物の声を聞き続けた」なんていうと、どこか神がかり的になっちゃうんだけど、道法さんは、広島弁で下ネタをがんがん飛ばし「手抜きして儲けるのがいちばんええんじゃ」と言い放つ元「チャラ男」な農業者だ。それでいて、植物生理学をきっちり抑えながら、現場での実証比較を繰り返してきた科学的なアプローチのできる地に足を着けた農の実践者でもある。

 

この本では、肥料も農薬も使わない自然農法果樹栽培のジャンルでは超有名人である道法さんと、その農法に引き寄せられた7人の農業関係者が魅力的な筆致とイラストで紹介されている。農に興味がない人でも、魅力的な登場人物たちにノックアウトをくらうんじゃないだろうか。それでいて、今の農業に関する様々な問題の本質に鋭く迫る好著でもある。イラストもかわいい。こんな取材ができて文章が書けてイラストも描ける著者の金井真紀さんという人に嫉妬してしまうくらいだ。実際、電子書籍で買って夢中で一気読みしてしまい、紙の本も買ってしまった。農に関する僕のいろいろな疑問を解くカギもここにありそうで、しばらく道法さんとその仲間たちの追っかけになりそうな気がする。