日本のものづくり再生というか、世界の中での地盤沈下を少しでも防ぎたいと思って、何か手はないのかなと、日々、ネットと書籍を漁っている。僕がそれを見つける頃にはいろいろなところで、誰かが既に着手しているだろうから、自己満足でしかないけれど……。でも、まあ、個人的な知的好奇心は刺激されるので僕としては続ける意味はある。
今日は、その流れで今では僕の二大バイブルとなった『第4次産業革命』と『シン・ニホン』をつなぐ1冊について紹介したい。『Learn or Die〜死ぬ気で学べ〜プリファードネットワークス(PFN)の挑戦』がその本だ。
日本が誇るAIユニコーンPFNの創業者二人が自分たちの会社と、AI・深層学習についての技術と方向性について、ここまで開示してくれるんだ、というくらい率直に語ってくれている。AI・IT・ソフトウェア、ものづくりに関心のある日本人なら必読書と言えるんじゃないだろうか。個人的には、三冊目のバイブルというか、少なくとも絶対に欠かせない副読本だ。
この本では、ものづくりの現場における「サイバーフィジカルシステム」(CPS)と、ロボットを組み込んだ生産システムが、深層学習によるAIによって結び付けられることが示されていて、おそらくこれが本書でいちばん重要な点になると思う。
ロボットを組み込んだ生産システムとは、ロボットと製造装置が製造実行システムによって統合され、無駄なくスピーディーにものづくりをする自立分散型の生産システムのことで、このシステムを実装した工場がスマート工場と言える。
僕の理解では、深層学習AIをベースにしたロボット生産システムは、以下の4つの要素から構成される。
1)深層学習データベース:匠の技を含む製造ノウハウ(製造プロトコル)を深層学習によってシステムの中に実装されたもの(暗黙知が形式知化されたもの)
2)製造実行システム(MES:Manufacturing Execution System):上記製造プロトコルに従って、製造装置とロボットが自律分散しつつ無駄なくスピーディーに生産する的に生産する仕組み
3)顧客から経営、現場までを一気通貫で通す統合基幹業務システム(ERP):顧客ニーズに対して的確に対応し、マスカスタマイゼーション、つまり究極の多品種変量生産を可能にするシステム
4)自社と協力他社の分散協調連携を可能にするインターフェース:要は、取り決めとデータ連携の約束ごととでも言えばいいか
この4つをうまく実装できれば、ものづくり企業は理想に近いサイバーフィジカルシステムを手にすることになる。つまりDeep Learning based CPSとでも言えばいいのかな、まだほとんどのところが手にしていないと思うが、そういったものだ。いちおう、これを目指すことが日本のものづくりの地盤沈下を防ぐ最良の道だろう。最短の道はカイゼンやQC的なこれまでの日本のお得意の方法論だが、それが最善の道につながるかどうかは僕にはわからない。これについては観察と考察を続けたい。
なお、PFNでは60歳を超えた優秀な技術者がどんどん可能性を広げているというくだりもあって、自分を含めたシニア再生の観点からも希望が持てるというか励まされるというか、とにかくエネルギーとメッセージに溢れた1冊。日本の未来を感じさせてくれる。